ギャラの支払の税金について

これまで活動してきたミュージシャンはほとんどの場合ギャラをもらう立場にいたが、コロナ禍で自身が企画者となり、仲間のミュージシャンへギャラを支払う立場になった人も多い。支払者は源泉徴収税の管理義務者となるので、
申請方法や納付方法がよくわからない人も多いと思う。
私も、2020年の5、6、8、10月と、
国や京都市の補助を受けた芸術活動の継続支援なるものにお世話になりながら
ネット配信を行って来たので、かなり遅ればせながら税の処理に挑んでみた、、

1.ケースを想定

イベント開催にあたって、数名〜十数名へのギャラ、いわゆる「謝礼」や「報奨金」「役務費」というものを支払う場合。人数、イベントを実施する月、支払額を算出。

例)2020年8月に合計5回の配信を行い、出演者やスタッフ計6名に対して、報償費を支払う。内訳はミュージシャン(個人事業主)5名と、配信オペレーター(法人企業所属または法人化している方)1名。

金額例)2時間枠出演の3名のミュージシャンへ11,137円(うち源泉徴収税1,137円、手渡す金額は10,000円とする)、1時間枠出演の2名のミュージシャンへ5,568円(うち源泉徴収税568円、手渡す金額は5,000円とする)、配信オペレーターへ手渡し役務費30,000円(相手が法人なので源泉徴収義務は発生しないのでここでは除外する)(*1時間5,568円と設定したのは手渡し額をわかりやすくする為で、報償費の金額設定は任意。ちなみに補助金などのガイドには報償費の目安の金額が記載されているのでその金額に設定しても良い。)

支払合計金額)(11,137円×3=33,411円)+(5568円×2=11,136円)=44,547円

うち、源泉徴収額)(1,137円×3=3,411円)+(568円×2=1136円)=4,547円

2.源泉徴収税の誤差と計算方法

上記の計算は、各自に手渡した金額を足している、つまり10,000円なら10,000に0.8979をかけた金額(11,137円小数点は切り捨て)、5,000円なら5,568円、それらを足して算出した総支払額が44,547円であるが、この合計金額に税率の10.21%をかけると、4,548円となり、誤差が出てしまう。が、正しい納付計算としては、各自の金額から算出した源泉徴収税を足したもの、4,547円が正解。

なので、納付書(申請書)には、

支払額 44,547円 源泉徴収税額 4,547円

と記載する。

3.納付の方法について

★アナログな納付書、WEB申請の2通りがある

従来の方法では、管轄税務署に納付書を発行してもらい、記載して郵便局や銀行で納付する方法があったが、現在ではWEBにてe-taxを利用する方法がある。ちなみに報酬についての納付書はこういうものだ↓

給与支払者宛に、年末調整時に自動的に配布される納付書とは違うもので、報酬についての納付書はその都度、税務署に発行してもらう必要があり非常に面倒。直接行って発行してもらう方法と、電話で問い合わせて発行し郵送してもらう方法があるが、発行するためには「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」というものを事前に申請しておく必要があるので、どちらにしても一度管轄の税務署へ行く必要がある。(web申請だけの場合、その必要があるのかは確認中)

★e-taxでの申請

国税電子申告・納税システム(イータックス) https://www.e-tax.nta.go.jp/

e-taxのサイトより、識別番号を取得。ログインして申請・納付(ネットバンキングやクレカ、期日設定の引き落としができるダイレクト納付など支払い方法が各種ある)のすべてがパソコンやスマホだけあれば可能。確定申告はマイナンバーなどの個人識別認証のためにICカードリーダーなどが必要だが、源泉徴収の申告と納付については証明書などは必要ない。ちなみにダイレクト納付を希望の場合はweb上で銀行口座の登録をしておく必要がある(認証されるまで1ヶ月ほどかかる模様)。筆者は取り急ぎネットバンキングで支払った。

4.納付するタイミングと延滞金について

★開催月(支払った月)の翌月10日までに納付するルール

今回のケースでは、2020年8月中に開催した計5回のイベントについて支払っているので、2020年9月10日までに申請・納付を済ませる必要がある。その期限を過ぎると、年率2.6%で延滞金がかかってしまう。365日で2.6%なので、延滞した期間分、日割りで延滞金(追加徴税)がかかる。

国税庁に問い合わせたところ、期限が過ぎていても、ひとまずは支払った金額と納付する源泉徴収税の申告・納付を一旦済ませておけば、その後延滞金を計算してくれて追加で支払う金額を通知してくれるようだ。(郵送での通知なのか、WEBで行った場合はWEBでのお知らせが届くのかは確認中)

5.領収書と源泉徴収票(支払調書)の作成

手渡しでギャラを支払った場合は領収書を出演者に請求する。(手渡す時に企画側でフォーマットの領収書台紙を用意してあげましょう)その際の金額は、源泉徴収税を含めた金額を記載してもらい、「但し,所得税として10.21%の源泉徴収を含む」と記載しておく。支払先住所、氏名を明記してもらい、ハンコをもらう。

但し書きについては、そのイベント名でも良いし、「謝礼として」「報償費」など記載してもらえば良い。(補助金申請などとの兼ね合いがある場合は、その申請の際の科目に合わせた但し書きをしておく方がよい)

★支払調書の作成

ネットなどでテンプレートが無料で入手できるので、それらをそのまま使用するか、それらを模してEXCELなどで作成する。今回のケースのみだと、2020年が終わって、各自ミュージシャンが確定申告をするまでの期間(〜2/15あたりまで)には発行しよう。

サンプル配布用EXCELデータ

ミュージシャンへの報酬などに使用できる源泉徴収票のサンプルを作成しましたこちらからダウンロードし、利用ください

補足:計算方法まとめ

★税を抜いたわかりやすい支払金額から税率を割り出す

支払った金額÷0.8979=源泉徴収税額を足した総支払金額

例)10,000円を手渡すが、税を含めた金額を割り出したい場合 10,000÷0.8979=11,137(小数点以下切り捨て)

支払額 11,137円(うち源泉徴収額1,137円)*領収書には11,137円と記載、税を1,137円と記載、ギャラは10,000円を手渡す。(源泉徴収税1,137円は預かる)

→翌月の10日までに、預かった1,137円を納付する


1円単位までややこしい金額を用意するのは大変なので、多くのケースは札でピッタリなギャラを支払うことになる。なので、あらかじめ、だいたいのケースをメモっておくと便利。

  • ギャラ30,000円→支払額33,411円(源3,411円)
  • ギャラ20,000円→支払額22,274円(源2,274円)
  • ギャラ10,000円→支払額11,137円(源1,137円)
  • ギャラ5,000円→支払額5,568円(源568円)
  • ギャラ3,000円→支払額3,341円(源341円)
  • ギャラ2,000円→支払額2,227円(源227円)


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